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zoom RSS 吉田松蔭の遺書「留魂録」を読んで 花吹雪の季節に

<<   作成日時 : 2010/04/18 10:09   >>

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画像花吹雪の季節ですね。桜の花びらが止むことなく舞い散り
花びらが道を染めています。
私はこの季節が一年のうちでいちばん好きです。 
桜の散るさまを見ると、桜のように散っていった人たちがしのばれます。 
先日、ある人に勧められて、吉田松陰の「留魂録」を読みました。
放映中の大河ドラマ「龍馬伝」にも松蔭先生、登場していました。
私がイメージしていた松蔭像にはほど遠かったのですが・・・
なんか老けすぎで少し騒々しくがっかり。
ああいう感じではなかったのでは?
吉田松蔭(1830〜1859)は30歳という若さで世を去りました。 30歳ですよ!!

画像


画像「留魂録」は松蔭の遺書です。松蔭は幕末、いわゆる安政の大獄(1858〜1859)
斬罪 されました。若い盛りの30歳で死を迎えることになった松蔭は、小伝馬上町の牢獄で、処刑されることを知り、その二日前から門下生にあてた遺書を書き出します。そして彼は処刑前日に、その魂をこめた長文を書き上げるのです。

              松蔭肖像 松浦松洞筆 山口県文書館所蔵→

私が読んだのは、講談社学術文庫の古河薫氏による訳注と現代語訳がついたものです。松蔭は長州藩きっての秀才とうたわれた人。 原文は私にはむずかしく、訳注と現代語訳がついていなければ、チンプンカンプン。よく一日やそこらでこれだけの理路整然とした長文を書けたなぁ!と驚きました。 けれど現代語訳のおかげで誰でも読めるのはありがたいです。

「留魂録」は、その八章が有名です。 とても考えさせられる内容でした。わずか30歳なのに、こうした死生観を彼はいだいていたのですね。感動しました。少し引用いたしましょう(現代語訳より)


画像
 


「 今日、私が死を目前にして、平安な心境でいるのは、春夏秋冬の四季の循環ということを考えたからである。

つまり、農事をみると、春に種をまき、夏に苗を植え、秋に刈りとり、冬にそれを貯蔵する。秋・冬になると農民たちは

その年の労働による収穫を喜び、酒をつくり、甘酒をつくって、村々に歓声が満ちあふれるのだ。 この収穫期を迎

えて、その年の労働が終ったのを悲しむ者がいるということを聞いたことがない。 

  私は三十歳で生を終ろうとしている。いまだ一つも成し遂げることがなく、このまま死ぬのは、これまでの働きに

よって育てた穀物が花を咲かせず、実をつけなかったことに似ているから惜しむべきかもしれない。だが、私自身に

ついて考えれば、やはり花咲き実りを迎えたときなのである。 なぜなら、人の寿命には定まりがない。農事が必ず

四季をめぐって営まれるようなものではないのだ。 しかしながら、人間にもそれにふさわしい春夏秋冬があるといえ

るだろう。 十歳にして死ぬ者には、その十歳の中におのずからの四季がある。 二十歳にはおのずから二十歳の

四季が、三十歳にはおのずからの三十歳の四季が、五十、百歳にもおのずからの四季がある。 十歳をもって

短いというのは、夏蝉を長生の霊木にしようと願うことだ。 百歳をもって長いというのは、霊椿(れいちん)を蝉にしよ

うとするようなことで、いずれも天寿にたっすることにはならない。 私は三十歳、四季はすでに備わっており、花を咲

かせ、実をつけているはずである。それが単なるモミガラなのか、成熟した栗の実であるかは私の知るところではな

い。 もし同士の諸君の中に、私のささやかな真心を憐れみ、それを受け継いでやろうという人がいるなら、それは

まかれた種子が絶えずに、穀物が年々実っていくのと同じで....」(註:霊椿とは長生きする霊木)

松蔭は人生を測るものはその長短ではないと言っています。どんなに短くとも、それぞれの四季があり、その生を彩り、意味あるものにしていると。 深く考えさせらる松蔭の言葉ですね。 ちなみに、安政5年、松下村塾に在籍した主要な顔ぶれ30人のうち、明治まで生き残ったのは半数にしかすぎないそうです。

画像
 

松蔭は数々の名言を残しています。龍馬もそうですが、本当に大きな方ですね。 

身はたとひ 武蔵の野辺で 朽ちぬとも  留置まし(とどめおかまし) 大和魂(やまとだましい)

と辞世を残し、30歳で逝った一粒の種。 それは明治維新を決する大きな原動力になりました。 彼はまた自分が逝ったあとの家族の心情を思いやり、つぎの辞世も残しています。 逆縁となって残される親のことを思えば、辛かったことでしょう。
 
親思ふ こころにまさる 親ごころ けふの音づれ なんときくらん 

松蔭の遺言を読みながら、ふと、金子みすず(1903〜1930)の詩、「花のたましい」をなぜか思い出しました。 女の子なら、花びらをご飯に見立てた、ままごとをしたことがあるはずです。 ハイ、私もしていましたよ。そういえば、金子みすずも30歳前に世を去りましたね。 

「(花の)なきがらさえ、ままごとのごはんになってくれるから」 ほろりとします。 松蔭の人生を思うとき、なぜか「花のたましい」がいつも思い浮かびます。 松蔭は、この「花のたましい」に少し似ていると。 

花のたましい   金子みすず   


ちったお花のたましいは  みほとけさまの花ぞのに  ひとつのこらずうまれるの

だって お花はやさしくて おてんとさまがよぶときに  ぱっとひらいて ほほえんで 

ちょうちょにあまいみつをやり  人にゃ においをみなくれて 

風がおいでとよぶときに やはりすなおについてゆき

なきがらさえも ままごとの ごはんになってくれるから


画像


花吹雪のなか、スノー・ドロップの可憐な花が、桜の花びらの帽子をかぶっています。そして山吹が雨上がりの空のもと、さん然と輝く黄色い花をつけていました。 

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おまけ

私はあまり松蔭について読んではいませんが、司馬遼太郎の「世に棲む日日」がとてもよかったです。松蔭と高杉晋作。 幕末の青春群像。 ああ、今の政治家たちが情けなくなるような気が・・・・

世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)
文藝春秋
司馬 遼太郎

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高杉晋作、凄すぎ。高 ...
幕末の志士たちの純粋 ...
あまり面白くない高杉 ...

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吉田松陰 留魂録 (全訳注) (講談社学術文庫)
講談社
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<人間感化力>に富ん ...
「今日死を決するの安 ...

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コメント(14件)

内 容 ニックネーム/日時
松蔭ですかあ。 そういえば、「身はたとい武蔵野の野辺に朽ちぬとも」は、花吹雪の季節に相応しい歌ですね。「一世の知勇を推倒し、万古の心胸を開拓す」という司馬光の名言がありますが、松蔭の情熱とすがすがしさは、そんな感じがします。 海音寺さんの武将列伝「吉田松陰」の項に、聖書の「一粒の麦の種」は現実にあるのだ、という評価が載っていましたが、松蔭は、徳川300年の結晶のような人だと思います。 山吹、きれいですね。道路に散った桜画の花びら……私はいつも、踏まないように遠回りします(笑)。
紫雲
2010/04/18 22:37
紫雲さん、こんばんは
松蔭はおっしゃるとおり「情熱」的で「すがすがしい」ですね。私は海音寺潮五郎の武将列伝は読んだことがありません。面白そうですね。今度読んでみますね。「一粒の種」は現実にありました! ただ悲劇的な最期をとげないと、そうした種になれないのかしら?とも。まだまだ桜の花が、というよりソメイヨシノのあとに咲く他の品種の桜の花が今舞い散っています。八重桜が咲き出しました。当分花吹雪が楽しめそうです。本当にそう、桜の花びらを踏むのははばかられます。コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/04/19 21:42
大変は時代でした。一歩間違えれば、日本は亡かったかも。
世は、列強の圧力におろおろする幕府と、井蛙の新興士族の横行に混乱の度は増すばかり。そんな時、世界の情勢を知ることが先決と、松蔭は密航を企てて捉えられますが、その隠れ家跡を下田で見たばかりです。
憂国の士、松蔭や蛮社の獄の高野長英、渡辺崋山らは世界的な視野で日本を考えた人たちでした。
『留魂録』。必死の思いがこもったタイトルにまず惹かれます。機会があればぜひ手にとってみたい本です。
いつも好著を紹介していただき、有難うございます。
minoc
2010/04/20 12:05
minoさん、こんばんは
本当に大変な時代でしたね。今の価値観だけで、あの時代やその時代に生きた人たちを(過去の時代はすべてそうですが)あれこれ言うのは、的外れになることが多いでしょうね。そうそう、下田へいらっしゃいましね!私はその隠れ家を見たことがありません。下田に行く機会があれば、ぜひ見てみようと思います。「留魂録」はやはり8章が一番印象に残ります。死とどう向き合うかは、人にとって永遠の課題だからかもしれませんが・・・コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/04/20 21:46
こんばんは。
今日の記事、素晴らしいですね。

色々と、思う事があり、涙してしまいました。

ありがとうございますm(__)m

モニカ
2010/04/20 23:58
モニカさん、ありがとうございます
じつは私も八章を読んだとき、涙してしまいました。処刑される前日に書かれたものなんですよ。個人的には、松蔭が残した八章で言っていること、そうだと思っています。 
☆サファイア
2010/04/21 00:36
この本は、読んでみたいです。明日、図書館へいきますので、探してみます。ありがとうございますm(__)m
モニカ
2010/04/21 19:08
モニカさん、こんばんは
この本ですが、前半は法廷(評定所)でのやりとり(激論)とかにもかなり割かれていて、当時の尊皇攘夷の考え方を知る上で重要だと思いますが、みんなの胸に響いた死生観の部分はこの八章を中心とするもので、留魂録ぜんたいが死生観を述べたものではありません。 幕末の激動期の生の声がひびいてくるのは確かです。
☆サファイア
2010/04/21 21:22
なんと偶然でしょうか。。。
この吉田松陰の親にあてたと思われる辞世の句
『親思ふこころにまさる親ごころ 
        けふの音づれ何ときくらん』
このところ思い出しておりました。
数年前、親愛なる人、、56歳と54歳でこの世を去りました。そのとき留魂録を偶然読み心にしみいりました。そのとき私のもうひとつのサイトであるHPの日記に記しましたことを思い出していたのですが、サファイアさんのところで目にするとは、、、、涙なしでは読めませんでした。
人生は長短ではないと、強く思います。
花帆
2010/04/23 09:25
花帆さん、こんばんは
なんと花帆さんも松蔭のこと書かれいたんですね!本当に、涙なしでは読めませんね。56歳54歳は現代ではお若いほうですね。実は私が読むきっかけになったのも、学齢期のお子さんを残して亡くなられた方の奥様から「とても良かった」と伺ったからなんですよ。「留魂録」の八章は死生観についてですが、八章も含めて全体を貫く、今の時代にはない静かな威厳のある「気迫」に圧倒されました。激しく同時に静か。松蔭先生の性格でもあるのでしょうが、武士ですね! コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/04/23 19:37
サファイアさま、おはようございますm(__)m

図書館へいきましたよ♪留魂録がなく、留魂の翼というのを借りました。留魂録は、予約をしました♪

松陰のお話し、楽しみです。
ご紹介、ありがとうございますm(__)m
モニカ
2010/04/25 06:50
モニカさん、おはようございます

「留魂録の翼」は読んだことがありません。いいですね!!もしお時間があれば、ぜひ感想をお聞かせくださいね。わっ!楽しみです! 
☆サファイア
2010/04/25 09:11
素晴らしい記事に感動しました。
世に名を残す方はそれなりの使命を我が思いを
貫きとおした人が多いように思います。自我の
気持とは裏腹に、若くしてこの世を去らねばなら
なかった本人はいかに無念であったか計り知れません。
しかし天命を貫いたと思うしかありませんよね。
長寿であったにしても、天からの使命を知らず、果たせず、
天界に帰られる人だっています。そういう事を考えれば
短い一生に四季の生き様があったと、私は思います。
鈴蘭
2010/04/25 11:59
鈴蘭さん、過分なお言葉、ありがとうございます。

「留魂録」を読み進めていくと、覚悟した人の澄んだ境地に打たれます。八章にいたっては澄みきっているというか、「無念」を乗り越えた後の境地というのでしょうか。おっしゃるように「天命を貫いた」境地なのかもしれませんね。門下生に対する心遣いがさいごまで行き届いており、「ああ、先生」なんだという感を新たにします。幕末〜維新にかけて素晴らしい志士が輩出しましたが、みんな命をかけてひたむきで・・・たとえ夢の途中で散ったとしても、ある意味、そんなふうに生きることができるのは幸せなのかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/04/25 18:00

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