<マイクロ・クレジット>、<グラミン銀行>、そして<ソーシャル・ビジネス>。 日本の金融常識からおよそかけ離れたこの三つに今世界の注目が集まっています。 6日付けの朝日新聞に、バングラデシュで無担保少額融資制度(マイクロ・クレジット)を創設し、06年にノーベル平和賞を受賞した経済学者、ムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)氏へのインタヴュー記事が載っていました。 ユヌス氏は、「利益の最大化を目的とするビジネスだけに市場を使ってきた経済システムの再設計が必要だ」と語り、グローバル化や資本主義の現状に疑問を投げかけています。 グローバル化において、「問わなければならないのは、正しいグローバル化か、誤ったグローバル化かということ。強く豊かな者がすべてを取り、弱く小さい者は何も手に入らないのではなく、公平に分け前を取れるようにすべきだ」 「金融制度をただす前に、それを生んだ資本主義をただすべきだ。私たちは資本主義を誤って解釈している。 ビジネスとは金もうけのことで、利益の最大化がその使命という。 この解釈は人間を金もうけの機械と見なす、誤った解釈だと思う」 「すべての人間には利己的な面と、無私で献身的な面がある。私たちは利己的な部分だけに基づいて、ビジネスの世界を作った。無私の部分も市場に持ち込めば、資本主義は完成する。私はそれを<ソーシャル・ビジネス>と呼ぶ」 ソーシャル・ビジネス(SB)とは?「投資家は特定の社会問題の取り組みに投資する。 SBは損失も配当もない。社会に貢献する目的を持つ会社だ。 貧困解消や健康、貧しい人の住宅問題、 環境問題など様々な事柄に取り組める。 投資した金は、可能な期間で会社に元本を返済してもらう。 利益を生むかもしれないが配当を受けない。 金銭的利益ではなく満足感を得る。 会社の利益の使い道は、ビジネスの改善、拡大に使う。 会社自らは利益を取らない。 従来の慈善事業への寄付の代わりに、SBへ投資する 人間の二つの面(利己的な面と無私な面)が ともに機能する資本主義を完成させる必要がある。 利益の最大化を夢見る眼鏡を外し、SBの眼鏡をかけてみてはどうか。世界が全く違って見えるだろう」 (図および 「 」 朝日新聞1月6日より引用) ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 昨年だったと思います。 ユヌシ氏が総裁をつとめるグラミン銀行によるマイクロ・クレジットの利用により、最貧困層から脱してゆくバングラデッシュの人々についての特集番組をテレビで見ました。 <ホントにすごいなぁ!こうした理念に裏打ちされたしっかりした金融・融資システムがあれば、どんなに貧しくても、また虐げられた階層にいても、新しい世界へ踏み出すことができるんだ!>と感動しました。 マイクロ・クレジット(マイクロ・ファイナンス 小額融資)とは、 既存の銀行が融資しない貧困層を対象に無担保で小額を貸し付ける制度。貧しい人々が、融資を元手に自立のために起業し、貧困から脱出することを目的とする。 ユヌス氏らが1976年に始め、世界100カ国以上で実施されています。 グラミン銀行の定例会、地区のワークショップで話し合う女性メンバー 「グラミン銀行の女性メンバーは、公教育を受けた経験がまったくないか、初等教育までが、圧倒的に多い。さらに、若くして結婚し、家からなかなか出られないため、家族や狭い地域社会以外から、何かを学ぶ機会に極端に恵まれていない。 ワークショップは、このような女性に、学びの機会を提供している」*そうです。 その日暮らしでかつかつだったChaibia さん↑ マイクロ・クレジットの利用で衣服を売るビジネスを軌道にのせる 先進国に暮らす私たちは、貧しく恵まれない人たちにたいし、<寄付やチャリティ(慈善行為・事業>をよくします。 それはそれでとても役に立っているのではないかと思いますが、ユヌス氏はつぎのように考えています: <返済を伴わない援助は貧困に対して無力である、慈善は貧困を救えない。貧困がなくなるには、究極的には一人ひとりが自ら自分の経済をコントロールする力と自尊心を持ち、自立することが大切である> <チャリティ(慈善)で貧困をなくすことはできない。 貧困を克服するのは、一過性のチャリティではなく、循環的なシステムである>と。 つまり慈善(援助)ではなく融資システムを、と提言。 たしかにそうですね、一過性のアクションや愛の精神だけではどうにもなりません。 構造を変えるには、しっかりしたシステムが必要です。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ さて、冒頭の朝日の記事の「ソーシャル・ビジネス」。 新聞では、「ユヌス氏が総裁を務めるグラミン銀行のグループ企業はすでに、乳製品の仏大手ダノンや世界最大の仏水道事業会社ベオリアとの合弁で栄養価の高い安価なヨーグルトの販売や安全な飲料水の提供にあたる複数の会社を設立した。仏企業側とは、これらの事業から利益を得ないことで合意しているという」ユヌシ氏が日本にも呼びかける「利益を追わぬ投資」。 金融危機のなか、はたして呼応する勇気ある企業や法人は出てくるのでしょうか? 世の中にはいろいろな人がいますね。 自分の仕事に応じてなるだけ高い報酬を得たい人(儲けたい人)もいれば、人々に貢献する社会的な仕事を優先させたい人、あるいは、芸術など好きな仕事だけに没頭したい人、などさまざまです。 個人の選択の自由のなかで、ソーシャルビジネスを、従来型の企業ビジネスや個人ビジネスと共に発展させ共存させていくことができればいいのになぁ と思います。 かつて古代社会でありふれたものであった奴隷制を、21世紀の私たちは、おぞましく野蛮で非道な制度だと考えています。しかし、たとえば古代ローマ社会では、奴隷の存在を当たり前としていた人が大半だったのです。 アメリカだってようやく1862年に奴隷解放宣言なんですから。 それと同じように、22世紀、23世紀、24世紀の人たちが、20〜21世紀の状況を見るとき、たとえば、リーマン・ブラザーズの元経営陣のやり方や、弱者を切り捨て自分たちだけが儲かればいいという強欲主義を、そして「利益の最大化だけを目的とするビジネス」のあり方を、なんとおぞましく野蛮で非道なものだと考えるかもしれません。 社会通念や価値観は、歴史の推移のなかで移り変わりますね。 金融危機で雇用不安のなか、日本でも新たな方向への模索がされています。 ムハマド・ユヌス氏の活動とソーシャル・ビジネスについての提言は、旧弊なものを打ち破り、普遍性をもつ新たなパラダイムを予感させるもの。 新年早々嬉しくなりました。 世界にはガザなど大変なことがいっぱいあるものの、それでも少しずつ少しずつ、確実に動いているなぁと感じます。 アフリカ系のオバマ大統領の誕生でもわかるように・・・・ ユヌス博士、インタヴューと博士自身によるソーシャル・ビジネスの説明(英語) 前の記事■サントリー美術館 蒔絵展 宮殿を飾る東洋の煌めき ■へ 国際関係記事■リベリア 内戦を終らせた女たち■へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 参考 * 「グラミン銀行を知っていますか」 坪井ひろみ著 からの引用 ムハマド・ユヌス氏関連項目へ @ ニュース グラミン銀行を利用した人たちのレポート A グラミン銀行訪問 B ダノン( Danone ) のソーシャル・ビジネス (ヨーグルト) 英語 C グラミン銀行 HP 英語 グラミン銀行を知っていますか―貧困女性の開発と自立支援 東洋経済新報社 坪井 ひろみ ユーザレビュー: 現時点では最新のグラ ... ノーベル平和賞受賞の ... マイクロクレジットの ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家 早川書房 ムハマド ユヌス ユーザレビュー: 貧困のメカニズムを理 ... 強く推薦できる、素晴 ... 静かなる情熱の人バン ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ] 英治出版 ニコラス サリバン ユーザレビュー: つながることは生産性 ... 援助をやめて投資しよ ... 人と人とのつながりが ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
|---|---|
[今週のMF情報]今週のマイクロファイナンス情報
今年最初のマイクロファイナンス情報のご紹介はいつもより量が多いです。色んな人がマイクロファイナンスに関心を持って下さっていることを実感してきました! ソーシャル・ビジネス マイクロ・クレジット グラミン銀行 ムハマド・ユヌス博士に聞く(時空を超えて) >6 ...続きを見る |
LIVING IN PEACE - マイ... 2009/01/12 20:59 |
ソーシャルビジネス
先日3月8日の時事通信の記事で、グラミン銀行創設者で経済学者のムハマド・ユヌス氏が神戸市で講演された記事を目にしました。 氏はそこで、社会問題の解決を目的とした無配当事業「ソーシャルビジネス」に日本企業も取り組むよう呼び掛けています。 ...続きを見る |
スタッフブログ 2009/03/12 15:52 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
無担保にもかかわらず、返済率が100パーセントに近いという |
ピュア URL 2009/01/10 15:20 |
ピュアさん、今日は寒いですね。 |
サファイア 2009/01/10 17:34 |
はじめまして。れいんぼうです。 |
れいんぼう URL 2009/01/11 06:30 |
れいんぼうさん、はじめまして。 ありがとうございます。実は社会問題的なことを取り上げるのは、初めてなんですよ。 れいんぼうさんのブログのように、ずっと追ってきたのではないので、ちょっと恥ずかしいのですが・・・去年TVで番組を見たのと、新聞記事が出たので、つい・・・ |
サファイア 2009/01/11 11:16 |
ユヌス氏の創設したグラミン銀行がバングラデッシュの貧しい人々に |
MOKO 2009/01/11 15:43 |
これからの世界は、ソーシャルビジネスがどんどん広がり、企業も自分たちの利益だけでなく |
MOKO 2009/01/11 15:43 |
モコさん、今日も寒いですね。やはりあの番組ご覧になったのですね。びっくり感動ものでした。人は「衣食(住)足って礼節を知る」のだから、根っこ部分にある貧困をなくす方向に行かなければ、いくら「平和」とか叫んでも、不安定なままだと思うんです。モコさんがおっしゃる方向に結局社会は進んでいく、or 進まざるをえないのではないかしら? 初めはしぶしぶ参加していた企業もそのうち、それが当たり前になっていくのでは?時間がかかるかもしれないけど、全体が豊かになるほうが最終的にはビジネスだって上手くいくんだし。あの番組を見てわかったことは、「決めつけ」をしてはダメだってことかしら? 哀れな環境にいるんだから未来も絶望的だとか、可哀想な人に恵んであげるなんていうのは傲慢な決めつけかも。 決めつけをすると、その枠組みでしか考えられなくなるし。融資だとお互い対等ですね。 援助ばかりだと、援助される側の自尊心が損なわれるし、おっしゃるように自立できなくなりますね。 遅々とはしていますが、変化はずっと進行中ですね。 コメントありがとうございます。 |
サファイア 2009/01/12 00:55 |
こんにちは、とても興味深く読ませていただきました。 |
十里 URL 2009/01/12 00:56 |
十里さん、おはようございます。 あの番組とこのインタビュー、目からウロコですね。 貧困問題も結局はグローバル経済の中にあるから、経済の仕組みがよくわかっていないと、どうしようもできない面が多々あるんでしょうね。 なんでもそうだけど、お互いが対等の位置に立てる方法じゃあないと、どちらの側も居心地が悪いと思います。 また、最高の価値が、金もうけと「利益の最大化」であるというのも、こうした考えが普及するにつれ、じょじょに若い世代から見直しがすすみ、価値観が変っていくような気がするんですが・・・私も自伝読みた〜〜い!コメントありがとうございます。 |
サファイア 2009/01/12 10:49 |
こんばんは。 |
norako 2009/01/14 23:11 |
norakoさん、こちらこそ温かいコメントありがとうございます。 私は記事を読んで自分の感想をちょこっと書いただけなんですが・・・(笑)記事のほとんどはユヌス博士のお言葉でございます(笑) グラミン銀行のやり方にたいして、それでは大企業を呼んできて工業化するのが遅れるではないか、という批判もあるそうですが・・・色々な見方はあると思います。 少し気になるのは、大企業で工業化する(←それもいい面がある)だけが本当に幸せなのか?という素朴な疑問です。 先進国に本社のある一部の企業は、途上国で、先進国では規制されている汚染物質などを平気で垂れ流している現状を考えると・・・ |
サファイア 2009/01/15 07:34 |
慣用的に「先進国」「途上国」と書いていますが、なんかこの言い方もかなりうさん臭いですね。 なにをもって「先進的」なんでしょうかね? 疑問でございます。 (トホホ) |
サファイア 2009/01/15 09:29 |
オバマ大統領の就任演説の中で |
サザンエース 2009/01/22 21:58 |
オバマ大統領の演説、力強かったですね。 色々な障壁はあるものの、それでも少しずつ意識が変り、じょじょに新たな価値観が形成されるのでしょうね。遠い道を、何世代もかけて、オバマさんが言うように「希望」を捨てずにいくしかないんでしょうね。 コメントありがとうございます。 |
サファイア 2009/01/22 22:48 |
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