「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展 サントリー美術館 

画像秋の雲を写しこんで
青天に突き立つ摩天楼 
建物じたいが秋のオブジェとなっています
東京ミッドタウンのサントリー美術館で開催中の
「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展
に立ち寄りました。

18世紀後半、安永・天明・寛政期の江戸には
喜多川歌麿、東洲斎写楽などの浮世絵師の
スターたちが登場します。
蔦屋重三郎(1750-1797)は、彼らの版元でした

今でいう出版社の社長であった蔦屋重三郎。
本拠地は、日本一の遊郭、吉原でした。
この展覧会は、江戸文化における蔦谷重三郎の
出版人として果たした役割と功績にフォーカスして
おり、中々ユニークでした。また、歌麿・写楽の見事な
作品も多く面白かったですよ。 

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画像 じつは私、浮世絵は広重や北斎の風景
 そして国芳の描く動物、特に猫などは
 大のお気に入りなのですが
 遊女を描いた浮世絵は好きではありませんでしたし
 今でも好きではありません。
 とても美しい人が多いですが・・・

 浮世絵には多くの遊女が描かれていますね。
 彼女たちの境遇を考えると、いくら華やかに装っていても
 優美な所作であっても、痛ましくて可哀想で・・・・

 左 青楼七小町 玉屋内花紫 喜多川歌麿画 1794-95
 千葉市美術館
 
 皮肉なことに、江戸文化の最先端は遊女たちの吉原から
 発信されました。
 蔦谷重三郎は、吉原生まれの吉原育ち。 

画像元禄(1688-1704)以後、政治・経済が
京都・大阪から江戸へと重点を移すなかで
文化面でも江戸は著しく自己色を発揮してゆきます。

江戸での出版物の需要もうなぎのぼり。
18世紀の中葉には、江戸での出版点数が上方を上回ります。 
そうした時代のうねりに乗って、蔦谷重三郎は
吉原で1774年出版業を創業し、
吉原のガイドブック、『吉原細見』を世に出します。
ガイドブックって、昔から大人気だったんですね!

玉屋内 若梅 喜多川歌麿画 1793(右)
平木浮世絵財団
 
「傑出した版元と卓抜した芸術家が信頼の絆で結ばれあい
お互いの創造エネルギーを存分に放出することができたとき
そこには見事な文化の華が生み出される」 


画像 と松本寛はその著、「蔦谷重三郎 江戸芸術の演出者
 のなかで述べています。 まさにその通り!その点は今も昔も変わりません。 

 歌麿、写楽を発掘した重三郎は、北斎を狂歌本の「さし絵師」として抜擢。
 これがその後の北斎の活路を開きました。 鋭い発掘眼ですね! 

 私は蔦谷重三郎についてほとんど知らなかったので
 左の本を読んでみました。重三郎は大変企画力のある
 また常に時代の先端を読者に提供する熱意あふれる出版人だなぁ!
 と思いました。重三郎なら今の時代でもベストセラーを連発するでしょう!

 当時、吉原は知識人たちが集う一大文化サロンの様相を呈していました。

 狂歌が大流行した時代でもあります。蔦谷重三郎は狂歌会にも参加し、
 人脈を広げ、絵がついた狂歌絵本 ↓ をぞくぞく出版。 これがまたバカ受け。

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                    「百千鳥狂歌合」 喜多川歌麿画 1790-91 千葉市美術館  

上のじつにステキですね。歌麿さんが挿絵とはなんとぜいたく!絵だけで大変な美術品ですね!

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              新吉原春景図屏風(部分) 歌川豊春画 (1781-89)  当時の吉原の盛況ぶり

浮世絵と言えば、なんと言っても美人画と役者絵です。 歌麿の美人大首絵がたくさん展示されていました。圧巻!重三郎は、寛政年間(1789-1801)歌麿と手を組み、美人画界の制覇に乗り出します。 蔦谷出版の歌麿の美人画は、つぎの三つに大別されます。

① 評判の市井の美女を描いたもの つまりお店の看板娘など、素人さんです。いわゆる町のアイドル。みんなとても可愛いかったです。

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              難波屋おきた 喜多川歌麿画(部分) 1793 和泉市久保惣記念美術館
 
② 初めのほうに載せた、吉原遊郭の妓楼のシンボルとなる名妓を描いたもの きれいな人ばかり。

③ 「婦女人相十品」「婦人相学十躰」など、女性の内面性の真実に迫ろうとする意欲作 ということですが、私、よくわかりませんでした。 下の絵、浮気性の女子なんですって?? ええ、どこが~~~? 乳房が見えているから?顔はほかと大差ないように見えたけど・・・

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             婦人相学十躰 浮気の相 喜多川歌麿 1792-93 東京国立博物館

そして重三郎は写楽を発見します! 写楽がどういう人物であるかについては諸説がありますね。重三郎は、役者絵の世界でも覇権をめざします。そしてそれまでの役者絵とは異なる写楽による斬新な新役者絵を出版します。
大首絵、すばらしかったです。中々これだけの数の名品を見ることはできないでしょう。

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       四世松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛  東洲斎写楽画 1794 江戸東京博物館

重三郎は、一度に30種近くも同時に売り出すという派手な演出で、江戸っ子の度肝をぬいたのです。ナルホド、派手な仕掛けが有効なのは今も昔も同じなんですね。

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           谷村虎蔵の鷲塚八平次 東洲斎写楽画 1794 城西大学水田美術館

さて、会場で一枚の絵が目を引きました。歌麿の肉筆画「女達磨図」です。白隠を思わせる遊女です。不思議な絵だなぁ?と思っていたら、「女達磨」についての説明が下山弘著の「遊女の江戸」という本に載っていました。

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               女達磨図 喜多川歌麿画 寛政3-5年(1791-93)頃 栃木市蔵

だるまさんというのは、達磨大師が九年の座禅によって手足が腐ってしまったという伝説から、真ん丸い形をしていますね。 「女達磨」の絵は英一蝶(はなぶさいっちょう)が創始したそうですが、江戸期よく描かれたそうです。

画像吉原の名妓、半太夫が商人に縁付きました。
たまたま来客時、「だるまさん」の話になったとき
「おや、九年も辛抱なすったお坊さんが居てござんしたか」と
女房になった半太夫は言いました。そして
「九年くらいなら大したことござんせん。女はふつう十年の年季。
してみれば、私なんぞだるまさんよりも悟りを開いた
と申せますかもしれませんよ、ホホホ」 と笑った。 

これにはお客は返す言葉がなかったそうです。

私は遊女のことも遊郭のこともよく知らなかったので
少し関連本(右)を読んでみました。

画像 歌麿たちの浮世絵に描かれた美しい遊女たち
 けれどもきれい事の裏には、陰惨な現実が牙をむいています
 彼女たちは貧しさゆえに売られ、年季に縛られ、男の享楽のため
 体がボロボロになるまで働かされた性の奴隷だったのですから。

 性病の罹患率はきわめて高く、年季が明ける頃には多くの者が
 子供の産めない体に・・・・
 日本各地にスゴイ数あったという江戸期の遊郭の中で
 最高級とされる吉原でもその点は例外ではありません。 
 吉原の公文書では「売女(ばいた)」が正式名称。
 地方では、村を歩けば、村人から石を投げられました。
 お墓は無縁墓。  
 
 扇屋内蓬莱仙 喜多川歌麿画 1793-94 東京国立博物館 

 浮世絵に残された美しい横顔、たおやかな立ち姿、はかなさ。
 きらびやかな吉原という苦界の中の生。 合掌。


簡単にご紹介しました。12月19日(日)までだそうです。ずいぶん前に見に行ったのですが、忙しくて記事が遅れてしまいました。 下はサントリー美術館のあるミッドタウンに隣接する檜町公園。

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                         新美術館のとなり 落ち葉でいっぱい



画像そしてサントリー美術館近くの新美術館では
没後120年 ゴッホ展 こうして私はゴッホになった」展
をやっています。 太字クリックで公式サイトへ。

12月20日まで。 このゴッホ展、本当にすばらしかったです。

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「アイリス」「サン=レミの療養院の庭」「アルルの寝室」などなど・・・・名品が多数出展されています。「アイリス」の前では作品がもつ圧倒的な美しさに涙が出そうになりました。 九州、名古屋でも開催されます。

参考: 「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展 公式サイト へ

 
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