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zoom RSS ゴッホの「バラ」は何を語るの? 三月、ミレーの「水仙とスミレ」に寄せて

<<   作成日時 : 2010/03/11 09:48   >>

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国立西洋美術館が所蔵するゴッホの「バラ」。 1889年の作品。 昔、バラの季節にこの絵を見ました。遠くから眺めると、薄紅のバラの群生は、まるで白くうねるように渦巻くように、緑の野原で美しく咲いています。

画像

                  Vincent van Gogh, バラ、 1889, 国立西洋美術館蔵

ゴッホが、その奇行のため、アルルからサン=レミ=ド=プロヴァンスの精神病院に移る直前に描いたと言われています。 

画像この作品を描いた前年の1888年、ゴッホはポール・ゴーギャンと南フランスのアルルで共同生活をしていました。 ゴーギャンと不和となり、やがて、ゴッホは、自分の左の耳を切り取り、女友達に送り付けた、とされています。

長らくゴッホは、「狂っていた」だの「気がおかしくなった」と言われ、それが定説になっていました。 本当にそうだったのでしょうか? 上のバラの絵から、静かな気品を感じるのは、私だけではないと思います。

耳を切った後に描かれた自画像
Vincent_van_Gogh
1889年、Courtauld Institute of Art Gallery蔵

ゴッホはバラをモチーフにした絵をほかに何点か描いています。 私は1890年、サン・レミの精神病院から出る少し前に描かれた下のバラも大好きです。


画像

            Vincent van Gogh. Roses. 1890. National Gallery of Art, Washington, D.C

昨年の2009年6月、ドイツの歴史学者、ハウス・カウマンたちの綿密な考証に基づいた研究により、ゴッホのいわゆる「耳切り事件」について、画期的な新説が発表され(本になっている)、国際ニュースで大きく取り上げられましたね。 ニュースによれば、

「1888年12月、ゴーギャンは南仏アルルのゴッホの黄色い家で暮らしていたが、なじみの売春婦をめぐって口論になり、ゴーギャンが剣を振り下ろすとゴッホの耳がそげ落ちた。故意か事故かは不明だが、ゴーギャンは剣をローヌ川に捨て翌日、警察には「ゴッホが自分で切り落とした」と説明。事件後、ゴーギャンが家を出たため、失意のゴッホは沈黙を守り続けたという」

新説によれば、ゴッホはゴーギャンとの一件でまいっていたものの、気が狂っていたわけではないのです! 
                        
画像 ゴーギャンのタヒチなどでのムチャクチャな生活ぶりを
 考えれば、ゴーギャンが剣を抜きゴッホの耳を切ったというのは、
 ありそうなことだと、ゴッホびいきの私は考えていますが........  
 私はハンス・カウフマンの新著はまだ読んでいませんので、
 詳しいことは、なんとも.......

 ポール・ゴーギャン自画像、1893年
 Paul Gauguin

 もし、この説が真実であれば、友人(ゴッホはゴーギャンをそう考えていた)
 のために、一切の沈黙を守ったゴッホが痛ましくてなりません。
 悪意と無理解のなか、貧乏で失意のうちに亡くなったゴッホ。 

そして新たに明らかになったことは、文学的で繊細かつ誠実、論理的ですらあったゴッホ。 事件後、それほどの時を経ずに描かれた二つのバラの絵。 その静謐さの中に、美しい魂の響きが息づいているように思えるのは、私だけでしょうか。

ゴッホは晩年、サン・レミの病院から弟のテオに送った書簡の中でつぎのように語っています:

「とにかく、特に今は私は病気なのだから、なにか自分の安らぎになるようなものを創作しようと思う。 ドラクロワにならって、あるいはミレーのように、黒と白でまず描き、それから彩色しよう。 彼らの絵の思い出をたどるように。だが、それらの絵の記憶はおぼろげである。 少なくとも、私の心の中で、正しい色として響く色調で(描こう)。 それは私の解釈にすぎないだろうけど」 1889年9月19日 (訳は私の意訳です)

画像ゴッホは、先輩画家、写実主義のミレーのことをとても尊敬していました。ミレーのモチーフや構図を取り入れたり、「種をまく人」(1881年、ゴッホ美術館)は、ゴッホの色彩によるミレーの作品の模写になっています。

自画像、
Jean-Francois Millet 
1840−1841年

ゴッホの生き様を見ると、涙が出そうになりますね。 

ミレーには、早春の森に咲く水仙とスミレを描いた心なごむ絵があります。森の中に薄日がさし、水仙とスミレがひっそり咲いています。 

ゴッホがこんなミレーの優しい絵を見て、心安らいだ日々が
あったなら、いいのになぁと思います。 見たことはあるのでしょうか?



三月、雨上がりの朝、ウチの庭にも、ミレーの絵と同じ水仙が咲き、スミレのちっちゃな芽がでています。 4月にはスミレが咲き出すことでしょう。 ゴッホとミレーの絵をふと思い出した朝でした。

画像
           
           Jean-Francois Millet, collection of Hamburg Kunsthalle, Germany.1867


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おまけ

冷たい雨の日々がニ三日つづいていました。 やっと晴れたので、庭を見てみると、スミレの小さな芽が芽吹いていました。 沈丁花はほぼ満開。 とてもいい香りです。 水仙もまだ咲いています。 もうすぐあちこちで桜が咲き出しますね!

画像

         上はスミレの芽です。本当にちっちゃい。赤みがかった赤ちゃんの新芽です。


画像画像













画像



画像



よろしければ、ミレーとゴッホの描いた絵を下のyoutubeでご覧ください。ゴッホは以前にも載せたドン・マクリーンの名曲”Starry Night"の歌が出ます。 この歌を聴くと、じ〜んときます。

ミレー



ゴッホ




  
ゴッホの手紙 中 テオドル宛 (岩波文庫 青 553-2)
岩波書店
ヴァン・ゴッホ

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
絵画は大好きで、絵画集を数冊持っています(和・洋)
特にミレーの作品には子供の頃から魅かれています。
ゴッホは好きなんですが、なんとなく理解しがたい絵が
多いような、そういう作品しかしりませんでした。
しかし認識ぶそくでしたね!こんなに繊細で優しい絵を
描いていたなんて・・・・そして生き様は悲しく寂しい
人生だったようにも感じられますが、事実はどうだったのか・・・
ご本人しかわからないことですが、生前報われなかったものの
現代そして行く末まで伝えられるであろう芸術に拍手です!

YouTubeでも絵画作品を観られるなんてしりませんでした。
素適なきじに乾杯です!
鈴蘭
2010/03/11 19:21
鈴蘭さん、ありがとうございます。
絵がお好きなんですね!ミレーのファンとは!!そのことは存じ上げませんでした! バラの絵、ステキですよね。ゴッホはこの2点以外にもバラをモチーフにしたすばらしい絵を描いています。ゴッホの書簡を読むと、文章も美しく論理がとおり、心打つものが多いです。私はゴッホ、好きなんですよ! ゴーギャンは彼の色々なことを読んで以来、作品はともかく、あまり人として好きではありませんが....画集を見てると、時間を忘れますね。 コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/03/11 21:59
こんばんは。

ゴッホが好きなので興味深く読ませて頂きました。
Kay
2010/03/14 19:31
kayさん
ゴッホ、お好きなんですね。小さい頃、父のもとへ広告の絵葉書がよく送られて
きました。その中にゴッホの「星月夜」があり、額に入れて大切にしていました。私もそれ以来のファンなんです(笑)コメントありがとうございます。
☆サファイア
2010/03/14 20:06
サファイアさん おはようございます。
ゴッホの耳事件、そんな新説があったとは初めて知りました。
誰が悪いとか悪くないとかの問題じゃなく
なんとなくうなずける新説。

同時に、ダイナミックなタッチのイメージの強かったゴッホの
心のなんと繊細だったことかと
これまでにも増して思い知った気がします。
ピュア
URL
2010/03/17 09:37
ピュアさん、こんばんは。
<誰が悪いとか悪くないとかの問題じゃなく>、そうだと思います。なんか二人の間の因縁というか、業のようなものを感じます。ゴッホは、掲載のマクリーンが歌っているように、suffered from your(ゴッホのこと)sanitiyでしたかしら? この世の粗野な一般的な波長と折り合うには、純粋で繊細だったようですね。だからといって、狂っていたわけでは全くない、というのが新説です。まあ、説ですが・・コメントありがとうございます。 
☆サファイア
2010/03/17 19:05
ピュアさん、私、書き間違ってます。
”Starry starry night" 
suffered from じゃなくて suffered for your sanity です。トホホ。

Now I understand what you tried to say to me,
How you suffered for your sanity,
How you tried to set them free.
They would not listen, they did not know how.
Perhaps they'll listen now.
☆サファイア
2010/04/02 21:37

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